面白い人間になろうと頑張らないで You Are Interesting Enough
2015年11月18日
ダメです。絶対にダメ。 わざわざフェンシングに行ってみたり、エコノミスト誌を読んでみたり、レディ・ガガのワールドツアーの来日コンサートに行ったりしなくていいんです。
そんなことより、自分が人に興味を持つよう努力しましょう。その人の希望や夢、今何をしているのか、などなどに。
皆さんは、そのままで十分面白いですよ。家にこもって昼メロばかり見ているのでないかぎりね。いや、たとえそうであったとしても、どこかに魅力があるはずです。でも、あなた方が本当の意味で面白い人間になるためには、他人に興味を持つことの方が重要なのです。つまり、相手の話に耳を傾け、自分について語りすぎないということです。
かつて、教授会でよく隣り同士になる同僚がいました。決して悪い人ではないですし、実際、彼との間には共通の話題がたくさんありました。英語が話せる人だったので、コミュニケーションも容易なはずだったのですが、彼には、ちょっとした違和感を感じていました。それは、結局、自分のことしか話さないということでした。自分が今何をしているとか、新しいアプリはこんなだとか、政府の委員会や金融機関でした発表はどうだったとか、自分の趣味はどうだとか、自分のゼミはどんなだとか、そんなことばかりなのです。彼が私について何か尋ねてきたことは、ついぞなかったのではないでしょうか。そのことに気がつくまでに、随分時間がかかりました。私って鈍感ですよね。
彼は、確かに面白い人間でしたし、おそらく今でもそうなのだと思いますが、彼と「会話」していると、自分が平べったい人間に思えてくるのです。まるで彼の車に轢かれてしまったかのように。自分が彼の演説の聴衆(一人だけですが)の中のひとりにすぎないという感覚に襲われるといいましょうか。まるで、みてみて~、と自慢する幼児みたいな人でした。私は席を変わり、他の人の隣に座ることにしました。可哀想なことに彼の隣に座る羽目になった人は、早速「アプリ」を自慢されていましたよ。
私には、他にも同僚がいました。彼らは、英語こそ流暢ではなかったものの、会話は一方通行になることはなく、自慢話もほとんどありませんでした。彼らとは、今でも良き友人です。
私には、よく集まって語り合う仲間がいまして、みな数々の業績を残してきた人たちなのですが、彼らが実際に何をしているのかを聞き出すのは結構大変です。かつての教え子たちも同じです。
教え子たちは、私に興味を持ってくれていますし、私も彼らに興味を持っている。そういう関係こそが、素晴らしい友情を築く上での基本なのではないでしょうか。