あなたの評判をガタ落ちにする単純な質問
2015 11/4
個人的すぎる質問はすべきではないということは、誰もが知っていることですよね。でも、知らないわけではなく、就職面接やバーでは、個人的な質問をすることは良くあることです。私自身も、個人的な質問をしてしまうことがありますし、人に個人的なことを聞かれても気分を害することはありません。あまりにも個人的すぎる質問に対しては、ただ答えなければいいだけです。
ここ東京に住んでいる外国人の中には、「どんな男性/女性が好みですか?」という質問や、「お箸は使えますか? 納豆は好きですか?」「どちらのご出身ですか?」のような単純な質問をあまりにも頻繁に訊かれるものだから、もううんざりだという人が結構いるようですが、私は違います。
そのような質問をする人は、ただ親しくなろうとしているだけなのです。ますます人と人とのつながりが希薄になっているこの世の中で、人とのつながりを求める人がいるということは、むしろ素晴らしいことではないでしょうか。
人から言われたことに対して、心外のあまり言葉を失うことも確かにあります。日本にはあまり反発することを好まない雰囲気があるので、そんな場合でも、私は大抵うまく受け流すようにしています。ところが、Hと私がある地元のレストランでイベントを開く計画を立てていたときのことです。そのレストランのアメリカ人マネージャーから二、三日後に連絡をもらうことになっていました。結局彼は、「後でまた連絡します」と言ったきり、二度と連絡してきませんでした。何年も前のことです。
ある日、顧客のオフィスで、そのマネージャーにばったり出くわしました。私は彼に、「あれはどうなっていますか?」と訊きました。彼は、私が何のことを言っているのかさっぱりわからないようでした。そのまま流そうかなとも思ったのですが、その時はちょっとピリピリしていた私は、彼に、例のイベントのことを説明しました。すると彼は、「連絡したものとばかり思っていました」と答えたのです。この男は本気かと私は憤慨しました。彼の記憶力は、リチャード・ニクソン米国元大統領やディック・チェイニー元副大統領に負けず劣らずひどいのか。「忘れていました」と言ってくれた方が、遥かにマシでした。「申し訳ありませんでした」と言ってもらえれば、だいぶ違ったと思います。
彼が職を失ってカンザスに帰ったと聞いても、少しも気の毒には思いませんでした。やると言っておきながら約束を果たさないことによって、自分にとって最も大切な財産である「評判」をどれだけ落とすことになるのか、気づかない人が何と多いことか。人はそれを「気配り」と呼んだり、「ただの顔見せ」と呼んだりするのですが、何と呼ぼうと、そうやって自分の評判を築き上げていくことがいかに大切か、気づかない人が多すぎます。有言実行できるかどうかで、あなたが誠実な人であるかどうかを周りの人は判断するのです。
ここで、「絶対にしてはいけない質問」の話に至るわけですが、それはまさに「評判をガタ落ちさせる質問」といえるでしょう。それにまつわるエピソードを手短にご紹介して、一体どんな質問なのかお話したいと思います。
あるコンサルティング・プロジェクトの獲得を目指して、元同僚が出した提案について、私は二、三時間を費やして目を通しました。そして、質問と提案を書いたコメントを彼に送りました。それに対して、彼からは全く返事がありませんでした。梨の礫(なしのつぶて)だったのです。
「ちょっと厳しすぎたかな?」「コメント、ちゃんと受け取ったのかな?」「具合が悪いのかもしれないな?」などと考えました。私はどう解釈したらいいのか思いあぐねました。一カ月ほど経ってから、彼に一言Eメールを送ることにしました。コメントは受け取ったか、プロジェクトは獲得できたかどうか、尋ねるためにです。
それに対する彼の返信が、まさにこの「絶対にしてはいけない質問」だったのです。
「返信しませんでしたか?」
はあ?
これなら、「返信したものとばかり勘違いしていました」と言う方がずっとマシです。責任感の欠如を露呈させるだけではなく、相手に責任をなすりつけようとする卑怯な手ではないでしょうか。彼の返信を受け取ったかどうか、今度は私が考えなくてはならなくなってしまいます。私は唖然として、二の句が継げませんでした。彼はそういた後、結局プロジェクトの獲得は成功し、忙しかったんだと言い訳をしました。
彼が顧客との打ち合わせ中にこの質問をしないことを、顧客のために祈るばかりですが、恐らくこの祈りは通じないものと思います。なぜなら、このようなパターンは繰り返されるのが常だからです。
私たちが使う言葉、尋ねる質問、話す内容は、言葉以上のものを相手に伝えます。それらは我々の人間性を象徴するものだと言えましょう。
ご自分の評判を上げたいですか? 出世したいと願っていますか?
でしたら、ぜひ肝に銘じて頂きたいのです。誰かに「後で連絡します」と言ったのなら、その約束を絶対に守ってください。
「返信しませんでしたか?」などと、絶対に口にしてはいけません。その質問をしたら最後、あなたの周りにいる素晴らしい人たちが、今後あなたを相手にしなくなるでしょう。
(写真)評判