私が初仕事で学んだ夢
My First Job: I Learned About Dreams
私がコンサルタントとして働き始めた頃の話ですが、アメリカの職業訓練校のキャリア・ディベロップメント・プログラム(生涯発達プログラム)の大規模な改善プロジェクトという仕事があり、私はカリキュラム作成を担当していました。私は成功したくて必死でした。夢があったのです。全米の学校の学力を向上させるという夢です。全米の学校を訪問して、レベルをあげるには何が必要なのかを探り出すのが私の任務のひとつでした。
このような現場視察の後は意気揚々と事務所に帰り、同僚と協議して長い報告書を書いたものです。私は学校教育を変えたいという情熱に燃えていました。
そのプロジェクトは予定通り、というよりむしろ予定よりも一足早く進んでいました。チームの全員が一日一六時間以上も働き、プロジェクトの完成ために週六日出勤していたのです。あるとき上司がヨーロッパに一か月ほど出張に出かけることになったのですが、その間私たちは残った人間だけで何とかやって行きたいと思っていました。
しかし、代理の上司が送り込まれてきたのです。彼のリーダーシップのとり方は、私たち一人ひとりにノルマを課し、毎日特定の枚数の報告書を書かせるというものでした。毎日書いたものを終業時に回収するのですが、彼が実際にちゃんと目を通していたのかは疑問です。
これによって、私たちのやる気は完全にそがれてしまいました。夢を追求するために頑張っていたのですが、今や分担されたノルマをこなすだけになってしまったのです。こういう管理の仕方には私たちは本当にうんざりしました。この上司代理は、私たちと顔を合わせることもなく、感想を述べるでもなく、ただノルマをこなしているかどうかをチェックするだけでした。
もちろん皆、彼が設定したノルマをちゃんとこなしてはいましたが、多くのスタッフにとって、偉大な仕事を成し遂げたい、教育のために貢献したいという情熱は、消え去ってしまったのです。このノルマを課して監視するという体制は、私たちの夢を台無しにしてしまいました。プロジェクトチームを辞めた人もいますし、会社を辞めてしまった人もいました。自分たちの夢を理解しようとしない会社にいてもしょうがないと思ったのです。
この経験を振り返ってみると、品質の評価基準がないままノルマの達成だけを重視することになった結果、仕事の品質に悪い影響が出たのは確かです。威圧的な管理体制があったとしても、夢を追い続けることはできたかもしれない、と今となっては思うのですが、当時は目標を達成することに必死で、夢どころではなくやる気がそがれてしまったのです。
組織において、ひたすら目標達成だけに専念させることは、信頼関係の欠如の表れです。目標を設定するのは、信頼を築くことよりもはるかに簡単なのです。
組織の中に信頼関係が築かれていれば、わざわざ目標を設定したり、目標を達成できているか監視するシステムを作ったりする必要はなくなります。私が常に夢を持ち続け、夢を貫きとおすことができる仕事をしようと決意したのは、その初仕事のときだったのです。
私はいつも顧客の方々に、夢は何ですかと尋ねることにしています。夢は魂と生きがいに通ずる大事なものだと信じているからです。