私の顧客にジェイク・キンケイドという人物がいます。彼は、日本のある製薬会社の社長を務めていました。私はその会社の職場の諸問題についての相談を受けました。
ジェイクは経費削減を実行したかったのですが、日本人の部下たちのことがさっぱり理解できないとぼやいていました。従業員が改革に抵抗すると言うのです。社員に経費削減を実行させたくても、なかなかうまくいかないと言うのですが、それは一体なぜでしょう?
ジェイクは、お抱え運転手付きの車を使っていましたが、従業員の中に不満の声があることを聞きつけました。お抱え運転手付きの車は社長の特権で、毎朝自宅まで迎えに来て、誰かとの会合があれば送迎し、夜は家まで送り届けていました。その運転手は、ジェイクの奥さんがヨガやエアロビクスなど習い事に出かける時や、鎌倉の友達に会いに行く時にまで駆り出されていました。
ジェイク夫妻は、運転手が待機してぶらぶらしているよりはいいだろうと考えたのです。何しろ、車は社長の特権だし、自分に裁量権があると思っていました。
私もその車についての不満の声を耳にしたので、彼にそう伝えました。その車は、会社における不公平の象徴となっていたのです。従業員たちは、社長がこの高価な特権を手放さない限り、自分たちも経費削減の必要はないはずだと主張しました。でも、ジェイクはなかなか手放そうとしません。結果、彼は特権にしがみついたまま、数ヵ月後に経費削減を断念し、今度は従業員を削減し始めました。予想どおり従業員のやる気は急降下し、最も優秀な頭脳の何人かが、会社を辞めて行きました。1年後には、ジェイク自身も会社を去るはめになりました。
もしあの時、ジェイクが車をあきらめて、他の従業員と同様に電車やタクシーを利用するようにしていたら、社内改革を受け入れてもらうのはもっと容易だったでしょう。さらに、従業員に経費削減を実行させ協力させるための研修費やコンサルタント料だって節約することができたはずなのです。
経費削減や改革を考えていますか? どのように行動すれば、効果的で良い手本を示すことができるのでしょう? 自分自身がどう変わればいいのでしょうか?